学ぶ保険 企業を守るベストアドバイス 第12回(全12回)
企業経営者向け・正しい保険改善のチェックポイント
税理士新聞 2006年9月25日 掲載記事
企業にとってリスクマネジメントは、コストマネジメントでもあります。そのため、財務体質によって、保険の必要性や判断が変わります。
最終回となる今回は、そのコストマネジメントの基本となる保険の改善手法についてまとめました。
保険期間の統一
実践的な企業の保険改善プロセスは最初に、バラバラの保険期間を年1回にそろえることから始めます。
事務効率が図れる
総務や経理担当者の人件費なども会社の大事なコストです。
手続きは年に1回にしてロスを省くべきです。
コスト削減提案を引き出せる
手続きを簡素化した結果、会社側もリスクマネジメントについて検討する時間ができ、個々の保険ごとではなく、加入状況を全体まとめて依頼した方が、いい内容での企画提案が期待できます。
また、時間的余裕ができたことから、複数の保険会社に依頼することも可能です。各社とも独自認可を得ているオリジナル保険もあり、保険会社ごとに得意不得意があるので、組み合わせていくことが重要です。
損害保険も決算対策に
決算期に保険期間をそろえて、期末にまとめて年払した場合でも、基本通達2−2−14(短期前払)で、保険料を当期での損金算入が可能です。
保険は、リスクをコストに置き換える機能がありますが、いうなれば、「来年度に発生する可能性がある賠償金や修理代などを当期中の費用として計上することが出来る」ことになり、企業経営の安定を図ることができます。
保険の現金化
リスクを各分野ごとに
- リスクを洗い出し
- 優先順位をつけて
- 保険チェック
を実行します。
具体的な例をチェックリストにまとめましたので参考にして下さい。(表)
| <損害保険全般> | はい | いいえ |
|---|---|---|
| 1.決算月に保険始期を統一 | □ | □ |
| 2.補償範囲:オールリスク対応型保険か? | □ | □ |
| 3.補償額:保険金額の設定は最大リスクに対応できているか? | □ | □ |
| <資産に関するリスク編> | はい | いいえ |
| 1.地震保険に加入しているか | □ | □ |
| 2.商品在庫の変動への対応可否 | □ | □ |
| 3.現金・有価証券・預金通帳の盗難リスクへの対応 | □ | □ |
| <自動車リスク編> | はい | いいえ |
| 1.共済制度採用の検討 | □ | □ |
| 2.フリート(10台以上)は最新割引制度をチェック | □ | □ |
| 3.車両・対物について免責金額の設定を検討 | □ | □ |
| <賠償責任リスク編> | はい | いいえ |
| 1.事業上の賠償リスク全般を検証 | □ | □ |
| 2.個人情報漏洩リスクへの対応 | □ | □ |
| <人的リスク編> | はい | いいえ |
| 1.使用者賠償リスクへの対応 | □ | □ |
| 2.業務上と業務外に分けて企業責任の違いを認識 | □ | □ |
さまざまあるコスト削減の手法の中で、もっとも有効なのは保険の利用やめて、現金で置き換える検討です。
たとえば、代表例としては、団体定期保険、傷害保険の入通院、医療保険、自動車保険の高額免責の設定などです。
これらは長い目で見た場合、保険料を支払ってリスクに置き換えるよりも、現金で支払いしたほうが割安になることが多いのです。
保険会社は、一般的に損害率(全国で集まった保険料に対して支払った割合)が60%くらいを収支トントンの状態と考えています。
現実には、傷害保険の入院特約や医療保険の大半は、それよりかなり低い損害率で運営されています。
したがって、お客様側が長期的にみた場合、支払った保険料より受取った保険金が多くなることは平均的にはありません。会社の内部留保で対応できるリスク分野も多数あります。
財務体質に応じた対処
「保険の見直しは中小企業から優先して取り組むべきだ」と考えています。
なぜなら、中小企業こそリスクマネジメントが必要だからです。
売上1千億円の企業における1億円の損害と、売上10億円の企業の1億円の損害では意味が大きく違います。前者では「蚊にさされた程度」の損害が、後者では「経営の屋台骨を揺るがすくらい」の損害になるからです。
大企業ではリスクマネジメント専門の部署に十分なコストが掛けられます。
しかし、中小企業ではリスクマネジメント専門の部署など夢のまた夢です。例えば、大企業の建設現場では緻密な労働安全管理が実施されているのに対し、中小企業の現場は危険な状態のままです。中小企業の方が必要なのに、不利な状態で割高な保険料を負担しているというのが現状です。
リスクマネジメントはコストマネジメントでもあり、企業の収益や経営安全性に大きく影響します。
財務体質により保険の必要性や判断が異なります。会計事務所がこの分野に関心をもち、ベストアドバイスをすることが、企業から強く求められています。
橋本 卓也
保険サービスシステム株式会社
代表取締役
