学ぶ保険 企業を守るベストアドバイス 第9回(全12回)
中小企業も取り組める与信管理
税理士新聞 2006年8月25日 掲載記事
前回は、顧問先の防衛作として与信管理について解説しました。今回は、資金的に厳しい中小企業でも取り組める与信管理と、「取引信用保険」について仕組みを解説します。
ここまで使える取引信用保険
取引先の与信管理を行うことの重要性は多くの中小企業経営者が理解しています。また、会計事務所の先生方も日常で、アドバイスされていることと思います。
ところが、2003年に東京商工会議所が実施した調査によれば、「全取引先に対し与信管理を実施している」企業は全体の6%にすぎず、「特に何もしていない」企業が63%となっています。与信管理を実施できない理由としては、「人手、手間的に困難」「具体的方法がわからない」という回答です。
取引信用保険の第一のポイントとして、見積りの際に保険会社が個々の取引先企業について審査を実施しますので、その審査結果を取引先与信情報として有効に活用することが挙げられます。結果的に保険を導入しないこととなっても、保険会社によって算定されたそれぞれの取引先ごとの保険料率の高低や引受限度額は、今後の取引先との取引条件の変更や決済サイトの変更を行うための参考情報として活用することも可能です。
また、保険加入後も保険会社は定期的に取引先の信用状況をウォッチングし、状況が悪化している場合には契約者企業に警告などを行いますので、実質的な取引先与信管理のアウトソーシング機能が付加されることになります。
さらに、上記以外にこの保険を活用することで、次のような利点があります。
| 巨額損失の回避 | 連鎖倒産の防止予算の標準化 |
|---|---|
| 貸し倒れ損失の早期回収 | 資金繰りの安定化 |
| 与信管理の充実・向上 | 保険会社による取引先の監視機能 |
| 対外信用力のアップ | 営業債権の保全による金融機関・仕入先の信用力向上 |
(1)キャッシュフローの安定が図れる。債務不履行による債権回収には通常は相当の時間を要しますが、保険の活用により、損害額が確定したら、遅滞なく保険金が支払われますので、取引先が倒産した場合でも資金繰りへの影響を軽減することができます。
(2)対外的信用力の向上が図れる。貸倒れが発生しても、決算に悪影響を与えることがなくなりますので、対外的な信用力を維持することができます。この保険に加入していることで、銀行の評価も向上するなど、金融機関との交渉の円滑化に役立ちます。
(3)この保険料は通常掛け捨てで、全額損金処理しますので、毎年一定金額の保険料を予算化することで、万が一大口売掛債権の焦げ付きが発生しても貸倒れ損失を平準化する効果があります。
図1.取引信用保険に加入した場合の損益計算書
また、貸倒引当金は法定繰入率の縮小・廃止に伴い「有税引当」する事となりますが、取引信用保険を利用することで、実質的に、引当金を積むのと同様の効果を得ることができます。
| 中小企業倒産防止共済 | 取引信用保険 | |
|---|---|---|
| リスクヘッジできる 限度額 |
小さい (積立額の10倍3,200万円限度) |
大きい (取引先ごとに与信審査で決定) |
| 受け取る資金 | 貸付金 (返済する必要がある) |
保険金 |
| 掛金 | 積み立て型 (ほぼ全額戻ってくる) |
掛け捨て |
| 経理処理 | 全額損金 | 全額損金 |
(次回につづく)
成瀬 秀幸
保険サービスシステム株式会社
ファイナンシャルプランナー
