学ぶ保険 企業を守るベストアドバイス 第8回(全12回)
関与先を連鎖倒産から防ぐ
税理士新聞 2006年8月15日 掲載記事
顧問先防衛を考えたとき、実は与信管理の徹底こそ不可欠な要素です。ただ、与信管理だけでは不十分なこともあります。そこで今回は、顧問先のリスク対策を万全にするノウハウを提案します。
取引信用保険の効果的活用法
企業において、与信管理は重要です。特に決済サイトが長い会社やその上、粗利益率が低い業種などでは、取引先の倒産が、企業経営に与えるインパクトが大きく、極めて大切な経営課題といえます。
ところが、中小企業においては、資金的な余裕が不足し、企業体力が弱く、貸し倒れ発生の場合には決算が大幅に悪化しやすい環境にあります。ところが、人員や情報が不足しているため十分な与信管理が行われていないのが実態です。
そこで、会計事務所は、顧問先企業に対し、手形取引を減らす、決済条件を見直す、取引先自体の見直し、そして資金調達の多様化などの財務体質の強化を指導します。 そして中小企業における与信管理の徹底などを提案することが肝要です。その上で、万一のためのリスクヘッジとして保険の活用(取引信用保険など)の検討を指導すべきです。
今回、代表的な保険として「取引信用保険」を解説します。取引先の倒産、もしくは返済遅延の発生等により、売掛債権が回収できなくなった場合にその損害がカバーされるものです。

欧米では企業で幅広く活用されているリスクヘッジ手法です。
従前は、日本の保険会社は経験値が少なく、引き受け条件が厳しくハードルが高かったことから、本来は、優先して検討すべき中小企業においては、大半の会社が未導入であるという実態です。
無駄な保険料を多大に負担している反面、このようにより優先すべき保険は対応できていないという、まさにチグハグともいえる現状を見直さなければならない中小企業が大半です。
ケーススタディ
具体的な導入の手順は、まず、取引先のデータ(取引先ごとの決済サイトと債権残高等)を保険会社に報告します。
| No | お取引先名 | 住所 | 決済サイト | 債権残高 | 延滞の有無 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | A社 | 東京都港区 | 120 | 35,000 | 無 |
| 2 | B社 | 大阪府大阪 | 90 | 28,000 | 無 |
| 3 | C社 | 北海道札幌 | 150 | 19,000 | 無 |
| 4 | D社 | 東京都千代 | 90 | 12,000 | 無 |
| 5 | E社 | 兵庫県神戸 | 60 | 9,500 | 無 |
| (中略) | |||||
| 26 | F社 | 東京都渋谷 | 45 | 4,500 | 無 |
| 27 | G社 | 京都府京都 | 180 | 3,000 | 無 |
| 28 | H社 | 神奈川県横 | 60 | 3,000 | 無 |
| 29 | I社 | 千葉県千葉 | 30 | 2,000 | 無 |
| 30 | J社 | 東京都墨田 | 90 | 1,500 | 無 |
そのとき、たとえばA社とB社だけなどのように(銀行がおこなうファクタリングとは異なり)個別取引先のみを限定的に選択し保険の補償対象取引先とすることは出来ません。しかし、次のように
(1)全取引先
(2)債権残高上位20社のみ選択
(3)債権残高の下位15社のみ選択
(4)中位10社〜30社のみ選択
(5)事業部単位の取引先
など合理的・客観的な理由があれば付保対象企業を絞り込むことも可能です。
従前と比べ、保険会社も企業のニーズに応じて、上記のように、柔軟に対応するようになってきており、企業にとっても、導入しやすい環境に変化してきました。
保険会社は企業から提示された取引先データに基づいて信用調査をおこない、取引先企業ごとの信用リスク状況に応じて補償限度額を決定していきます。その際、保険会社は、取引先が優良企業の場合は、債権残高をほぼ全てカバーしてくれるのに対し、信用リスクが悪化している取引先には、低い限度額しか設定しないこともあります。
また、業種や企業の信用状況により保険料も大幅に異なってきます。
この保険は取引先の倒産(破産手続きの開始、民事再生手続きや会社更生手続きの開始、会社整理の開始、特別精算の開始の申立て)や延滞事故が発生した際に、債権額に応じ保険金が支払われる仕組みです。
(次回につづく)
成瀬 秀幸
保険サービスシステム株式会社
ファイナンシャルプランナー
