学ぶ保険 企業を守るベストアドバイス 第7回(全12回)
社員の社会保険料コスト負担(2)
税理士新聞 2006年8月5日 掲載記事
保険というと生・損保を思い浮かべますが、会社や社員にとって一番密接なのが社会保険料です。ただ、ほとんどの会社、社員は社会保険について詳しい事ことを知らずに様々な意味で「損」をしているケースがあります。そこで、前回に続き社会保険料コストセーブについて解説します。
社員の入社日と退職日がポイント
社会保険の被保険者資格の取得日は入社した日から、喪失は退社日の翌日が喪失日となります。ただ、社会保険料の徴収は月単位で発生します。すなわち、取得した月から発生し、喪失日(喪失月)の前月まで徴収されるのです。
下表1のように月末に入社した社員は、仮に1日でも保険料は1か月分徴収されることとなります。また月の末日に退職すれば、翌日つまり7月1日が資格喪失日となり、ここでも1か月分の保険料が徴収されることになるのです。 したがってこのケースでは、4ヶ月分の保険料が徴収されことになります。
| 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 労働月数 | 社保負担月数 | |
| 社会保険料の負担 | ○ | ○ | ○ | ○ | 約3ヶ月 | 4ヶ月 |
逆に、入社日は月初(例えば1日)を入社日とし、退職日は月末から1日引いた日を退職日に設定します。入社日の属する月から保険料の徴収が開始され、資格喪失日は退職日の翌日(30日)となるので、資格喪失日の属する月の前月まで保険料を徴収され、このケースでは、2ヶ月分のみ保険料を収めるだけで済むということになります。
| 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 労働月数 | 社保負担月数 | |
| 社会保険料の負担 | × | ○ | ○ | × | 約3ヶ月 | 2ヶ月 |
就業規則で退職日を定めている場合は、原則それに基づいて行なわなければなりません。会社側の意向だけで退職日を設定するのではなく、メリットとデメリットを社員に十分説明し、理解を得ることが必要です。
給与の支払い方を工夫する
賞与を月収に上乗せする…対策その1
社員の社会保険料コストセーブ対策その1として、通常年2回支払う賞与を、年12回に分割して月収に上乗せできないかを検討します。すなわち、賞与をなくして月収に加算するのです。
健康保険も厚生年金保険も保険料徴収の基準となる標準報酬月額表に基づいて保険料が決定されます。この厚生年金保険の上限額は62万円なので、月収62万円以上の方であれば、厚生年金保険料は変わりません。下記表のケースであれば、62万円を超えた28万円については、厚生年金の保険料が徴収されないことなります。
また、給付もよくなります。例えば、健康保険の傷病手当金はこの標準報酬月額に基づいて決定されます。このケースであれば、会社から支給される年収は変わりませんが、対策を講じたことで、傷病手当金が増えることになります。
年4回の賞与は月収扱い…対策その2
対策2として、通常年2回の賞与を、四半期ごとの賞与として年4回に変更する場合を検討してみましょう。
年2回より、4回に変えた場合、査定回数が増え、会社側の手間が増えることが欠点ですが、その代わり、社員個々人の成果がリアルタイムに反映しやすいことから、成果配分の意味合いが強い賞与という制度の本来の目的からも、四半期ごとの賞与は社員のやる気(モチベーション)喚起に役立つとも考えられます。
通常の年3回まで賞与は、社会保険上『賞与』として取扱いますが、年4回以上の賞与は『月収』としての扱いとなります。このケースでは、算定に当たっては4回分の賞与を12ヶ月に延べて算定し、結果的に対策1のケースと同じ保険料と給付水準になります。
| 従業員負担額 | 会社負担額 | |||
|---|---|---|---|---|
| 月給 (60万円) |
賞与 (180万円) |
月給 (60万円) |
賞与 (180万円) |
|
| 健康保険 | 27,819円 | 84,870円 | 27,819円 | 84,870円 |
| 厚生年金保険 | 42,150円 | 107,160円 | 42,150円 | 107,160円 |
| 月間負担計 | 69,969円 | 193,030円 | 69,969円 | 192,030円 |
| 年間負担計 | 839,628円 | 384,060円 | 839,629円 | 384,060円 |
| 合計 | 1,223,688円 | 1,223,688円 | ||
| 労使合計 | 2,447,376円 | |||
| 従業員負担額 | 会社負担額 | |
|---|---|---|
| 月給 (90万円) |
月給 (90万円) |
|
| 健康保険 | 41,492円 | 41,492円 |
| 厚生年金保険 | 44,293円 | 44,293円 |
| 月間負担計 | 85,785円 | 85,785円 |
| 年間負担計 | 1,029,420円 | 1,029,420円 |
| 労使合計 | 2,058,840円 | |
労使合計年間削減額 −388,536円
対策1も対策2も、結果として社会保険料の労使間年間合計で、社員1名あたり約39万円の節約となります。
(次回につづく)
馬場 栄
保険サービスシステム株式会社
社会保険労務士
