学ぶ保険 企業を守るベストアドバイス 第6回(全12回)
社員の社会保険料コスト負担(1)
税理士新聞 2006年7月25日 掲載記事
社員の社会保険料の負担は、会社にとってかなり痛い出費です。そこで、今回は社員の保険料コストについて解説します。
経営者と社員の認識の差は社会保険料
月給36万円、賞与72万円、年間給与を504万円で設定した例で、企業の負担は約67万円の社会保険料を加えた571万円になり、一方、社員は社会保険料、所得税、住民税などの税金等を控除した手取り額は、約418万円です。つまり、企業の負担感社員の手取は、実に年間約153万円の認識の差が生じているのです。今後、厚生年金等社会保険料負担増加の一途であり、この差額がさらに年々拡大することは確実です。
会社負担額と本人手取額の差
年間給与504万円(月給36万円、賞与72万円)の従業員(介護保険対象者)の例
<表1/会社負担額と本人手取額の差>
| 事業主負担 | 被保険者負担 | |||
|---|---|---|---|---|
| 月給36万円 | 賞与72万円 | 月給36万円 | 賞与72万円 | |
| 健康保険料 | 14,760円 | 29,520円 | 14,760円 | 29,520円 |
| (4.10%) | (4.10%) | (4.10%) | (4.10%) | |
| 厚生年金 | 25,718円 | 51,437円 | 25,718円 | 51,437円 |
| (7.144%) | (7.144%) | (7.144%) | (7.144%) | |
| 介護保険 | 2,214円 | 4,428円 | 2,214円 | 4,428円 |
| (0.615%) | (0.615%) | (0.615%) | (0.615%) | |
| 労災保険 | 1,620円 | 3,240円 | ||
| (0.45%) | (0.45%) | ― | ― | |
| 雇用保険 | 4,140円 | 8,280円 | 2,880円 | 5,760円 |
| (1.15%) | (1.15%) | (0.80%) | (0.80%) | |
| 合計年間負担額 | 48,452円 | 96,905円 | 45,572円 | 91,145円 |
| 678,334円 | 638,014円 | |||

今回は、社員の保険料を決定する保険の基礎な仕組みを解説します
被保険者(保険の対象者)にならない人
適用事業所に使用される者は、原則全員被保険者となります。
一方、短時間労働者(正規社員の所定労働時間、労働日数の4分の3未満の人)は被保険者となりません。パートタイマーやアルバイトなどの名称の如何を問わず、所定労働時間、労働日数で正規社員の4分の3以上の勤務をしている人は被保険者となる事が注意点です。
社会保険料の算定に含まれない科目
社会保険料の計算に際して、保険料の算定基礎となる賃金に含まれるものとそうでないものがあります。一般的に、基本給、家族手当、住宅手当、営業手当、残業代などのように金銭的に支給されているものと、食事代、被服代、通勤定期券など金銭ではなく現物支給されているものがあり、原則両方とも賃金(報酬)に含まれます。したがって、これらは保険料計算の基礎としなければなりません。
また、税務上で課税対象外となっている科目でも、社会保険では、保険料算定の基礎に含めなくてはならないものもあるので注意が必要です。例えば、通勤費(手当)は、税務上では一定の条件のもと非課税となりますが、社会保険上では、保険料算出の対象としなければなりません。
社会保険料が決定される仕組み
社会保険料は次のパターンから決定されます。(1)毎年4月から6月までの報酬によって決定される定時決定(2)昇(降)給のときに決定される随時改定(3)資格の取得の際に決定する取得時決定の三通りです。
| 対象月 | 決定された標準報酬月額の適用期間 | |
|---|---|---|
| 定時決定 「算定基礎届」 |
4・5・6月 ※1 | 9月から翌年8月まで |
| 随時改定 「月額変更届」 |
2等級以上の差が生じた月から3ヶ月間 ※2 | ・1月から6月までの間に改定されたもの →その年の8月31日まで ・7月から12月までの間に改定されたもの →翌年の8月31日まで |
| 資格取得時決定 「資格取得届」 |
入社したとき | ・1月から5月までの間に決定されたもの →その年の8月31日まで ・6月から12月までの間に決定されたもの →翌年の8月31日まで |
定時決定には4月から6月までの間に、平均報酬を算出して標準報酬月額を決定していきます。ここで決定した保険料が、その年の9月から翌年の8月まで保険料のベースとなっていくので、この3ヶ月間の給与の支払い方は大変重要です。
定時決定によって決定された保険料については、その年の9月から翌年の8月まで標準報酬月額が決定されます。
| 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 |
|---|---|---|---|---|---|
| 算定対象月 | 改定 | ||||
ただし、期中に昇(降)給やベースアップなどで、報酬が大幅に変動した場合は保険料を変更しなければなりません。これを随時改定といいます。
| 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 |
|---|---|---|---|---|---|
| 昇給月 | 改定 |
固定的賃金に大きな変動があり、従前の等級と比べて2等級以上あることが要件です。ここで大事なことは固定的賃金の変動がある場合にのみ変更があるのということです。すなわち、残業代が増えたり減ったりしても変動費なので、固定給(基本給等)が変動しなければ改定されないのです。
(次回につづく)
馬場 栄
保険サービスシステム株式会社
社会保険労務士
