学ぶ保険 企業を守るベストアドバイス 第5回(全12回)
社会保険料コストを下げる
税理士新聞 2006年7月15日 掲載記事
今回は、分社した場合の社会保険料のコストセーブの具体的かつ実践的な手法について説明します。
法人事業所か個人事業所を設立することでコストセーブを!
法人事業所は、社員数や業種にかかわらずすべての事業所が、社会保険の強制適用事業所になります。一方、個人事業はケースにより適用除外事業所となり、任意で適用するか否かを選択できる例外規定があります。
具体的には下表1のように、「従業員5人未満の個人事業所は任意適用事業所となること」「常時従業員が5名以上であっても任意に選択できる業種(サービス業や法務業など)があること」に注目します。このような個人事業の形態で経営する事業主が、個人事業とは別に法人事業所を設立するか、逆に法人事業所の経営者が、個人事業を設立するケースが考えられます。
<表1/社会保険の適用義務の有無>
| 5人未満 | 5人以上 | |
|---|---|---|
| 法人事業所 | ○ | ○ |
| 個人事業所 | × | △(※1) |
※1 次の事業を行う事業所は適用除外
・第一次産業・・・農業、畜産業等
・サービス業・・・理容業、飲食店等
・法務業・・・弁護士、税理士等
・宗務業・・・神社、寺院、教会等
そしてこの場合に、法人事業所と個人事業所を兼務する方が両社から所得を得ることにより、社会保険の仕組みがどうなるか事例を挙げてご説明します。
通常、法人事業所から役員報酬や給与を月100万円得ている役員や社員の社会保険料は、法人事業所と個人それぞれ年間約108万円の負担となり、合計すると200万円を超え大きな負担となります。また、個人事業所が適用事業所とならない場合、事業主の方は、社会保険に加入できないので、国民年金と国民健康保険となります。
所得で月収100万円の社会保険料を考えますと、国民年金保険料は年間166,320円(平成18年)と負担は軽めですが、国民健康保険料は介護保険料と合算して最高額の61万円と重くなります。
健康保険には傷病手当金という所得補償機能があり、保険料負担に比例した補償という反対給付の部分が存在するのと比べ、国民健康保険は保険料の負担の多寡により反対給付に影響しないことも考慮しなければいけません。つまり、肝心なことは、国民年金や国民健康保険は制度上、健康保険や厚生年金保険と比べ、給付の面で不十分な制度である点です(下表2)。
<表2/社会保険の適用義務の有無>
| 給付の種類 | 健康保険 | 国民健康保険 |
|---|---|---|
| 医療費の負担額 | 3割 | 3割 |
| 高額療養費 | ○ | ○ |
| 療養費 | ○ | ○ |
| 特定医療費 | ○ | ○ |
| 出産育児一時金 | ○ | ○ |
| 埋葬料(葬祭費) | ○ | ○ |
| 傷病手当金 | ○ | × |
| 出産手当金 | ○ | × |
ケーススタディ
100万円の報酬を、法人事業所から50万円、個人事業所から50万円受け取るケース
そこで、法人事業所から50万円の役員報酬か給与を得て、個人事業所から50万円の所得を得た場合で、仮に当該個人事業所が適用事業所にならなかった場合、法人事業所から受け取る月収50万円のみに厚生年金保険料と健康保険料と介護保険料がかかるため、実質本人の負担は大幅に減少し、年間約71万円となり、法人・個人の合計でも約75万円コストセーブとなります。
図1.100万円の報酬を、法人事業所から50万円、個人事業所から50万円受け取るケース

このように、実質、法人事業所企業と個人事業所を兼務するようなケースでは大幅な削減メリットが発生することをお分かりいただけたと思います。この個人の方が負担する71万円は個人事業主が負担する国保と国年合計の約77万円と比べて低くなったともいえます。個人事業主の保障の不十分さを補うことにも寄与した活用方法です。
(次回につづく)
馬場 栄
保険サービスシステム株式会社
社会保険労務士
