学ぶ保険 企業を守るベストアドバイス 第4回(全12回)
社会保険料のコストセーブ
税理士新聞 2006年7月5日 掲載記事
役員報酬に重くのしかかる社会保険料
今回からより具体的かつ実践的な『社会保険料のコストセーブ』手法についてお話していきます。
役員報酬にかかる社会保険料は高額です。例えば月収100万円(標準報酬98万円)の役員に会社が負担する社会保険料は果たしていくらになるでしょうか。表1をご覧ください。
<表1/役員報酬にかかる社会保険料は高額である>
例)月収100万円(標準報酬98万円)の役員に対して、会社が負担する1ヶ月の社会保険料はいくらか?(介護保険対象者)
| 事業主負担 | 役員負担 | |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 40,180円 | 40,180円 |
| 厚生年金保険料 | 44,293円 | 44,293円 |
| 介護保険料 | 6,027円 | 6,027円 |
| 月額負担計 | 90,500円 | 90,500円 |
| 年間負担額 | 1,086,000円 | 1,086,000円 |
| 合 計 | 2,172,000円 | |
企業が1200万円の役員報酬を支払うためには、約108万円の社会保険料を加えた約1,308万円の報酬を用意しなければならず、労使合計で約217万円の社会保険料を負担しているのです。
そこで、社会保険料のコストセーブは役員を優先に検討します。なぜなら、役員であれば取締役会で決定すれば即実行できますし、協力を得やすく効果が高いためです。
1、常勤役員か非常勤役員か
多くの中小企業では、夫が代表取締役・妻が取締役という形態をとっているケースが多いと思われます。そこで、常勤役員から非常勤役員に変更することがとても有効です。なぜなら、「常勤役員」から「非常勤役員」に変更すれば、社会保険の被保険者になることができないからです。
<表2/非常勤の取締役は社会保険になれない>
| 常勤取締役 | 非常勤の取締役 |
|---|---|
| 社会保険に加入 | 加入できず |
非常勤役員へ変更するためには、他の常勤役員と対比して出勤日数や労働時間の調整を行う等が必要があります。目安としては、常勤役員の4分の3以下に調整することが必要です。
報酬については『常勤役員時の何割に設定しなければならない』との規定が明文化されていません。ですから、高額な報酬の非常勤役員であっても、勤務日数や労働実態として一定未満であれば被保険者になれず社会保険料が発生しないことになります。
特に注目!60歳以降の役員
常勤役員から非常勤役員変更への対策は、その役員が60歳以上であれば特に有効です。年金受給対象者である役員を非常勤にした場合、『非常勤役員となれば報酬(収入)があったとしても、社会保険上の報酬とはみなされず、被保険者とならない』ので、在職老齢年金の支給停止が発生せず、年金を満額受給することができるため大変有利となります。
具体的な手続き
非常勤役員とするには、
(1)臨時取締役会を開催し、非常勤役員に関する議事録を作成します。
(2)社会保険事務所へ資格喪失届を提出します。
(3)健康保険の被扶養者にならない場合は、国民健康保険及び国民年金の加入手続きを市町村役場にて行います。
2、兼任役員にするか否か?
実態に応じて使用人兼務役員にできないかを検討しましょう。労働者的要素が強い役員は労災保険と雇用保険に加入することができます。したがって、労災事故の補償のみならず、退職時に雇用保険の失業等関連給付を受給することも可能となります。また、雇用保険の高年齢雇用継続給付や助成金の対象とすることも可能になります。
使用人部分に対して支払われる賞与は損金算入することもでき、税務面においても有効です。
3、役員報酬を別科目で支給
別科目とは、例えば、社長が会社に対して貸付金があるならば報酬を引き下げ、その差額の一部として社長への借入金返済を優先します。その際は、適正な金利を付加し、元利とも返済することがポイントです。借入金の返済は課税もなく、社会保険料もかからず、しかも全て手取りとすることができます。
また、土地や建物などを会社に貸しているのであれば、適正な範囲の家賃を徴収することもできます。土地や建物などの家賃は、社会保険料の対象外なので、このあたりを上手に組み合わせることで結果的には手取総額が増やすことが出来るのです。
年金受給者こそ検討すべき!
さらに、60歳以上の役員で年金受給対象者であれば、報酬を一定額以下にすることにより在職老齢年金として支給停止されていた年金を受給できます。したがって、別科目での検討と合わせ、報酬と年金のバランスも調整していくことが大事になります。
馬場 栄
保険サービスシステム株式会社
社会保険労務士
