学ぶ保険 企業を守るベストアドバイス 第3回(全12回)
自社株評価を引下げる手法
税理士新聞 2006年6月25日 掲載記事
世代交代時期を迎える中小企業のオーナー経営者にとって、事業承継・自社株対策は大きな課題です。自社株を後継者に移転する際に、株価が高く、購入資金や譲渡所得税、贈与税といった移転コストがネックになることがあります。今回は、生命保険を活用することにより自社株評価額を圧縮する方法をご紹介します。
類似業種批准価格方式の場合
まず、類似業種批准価額方式による評価額の圧縮方法です。算定要素である、「配当金」「税引前利益」「簿価純資産」のうち、「税引前 利益」「簿価純資産」の2要素については、生命保険を活用することで圧縮することが可能です。定期保険などの、保険料を損金に算入できる生命保険に加入することにより、税引前利益を圧縮できます。類似業種批准価額方式の計算上、「税引前利益」は3倍で計算しますので、株価に与えるインパクトが大きく、大幅な圧縮効果が得られます。
保険料を損金に算入できるという点では、掛捨てタイプの定期保険も該当しますが、逓増定期保険や長期平準定期保険のように、解約返戻金が貯まる保険に加入すると、簿外資産の形成による経営体力強化、役員退職金の準備など、同時に他のメリットを得られる効果があります。簿外資産としての解約返戻金は、類似業種批准価格の計算要素である「簿価純資産」を増やすことはならない点が大きい効果といえます。
図1.類似業種比準価額の評価圧縮効果

純資産価格方式では・・・
次に、純資産価額方式による評価額の圧縮方法です。会社の資産の帳簿価格をすべて相続税評価にした場合に簿価との差額が発生するものが効果的といえます。前述の、類似業種批准価額方式の対策として定期保険に加入した場合、簿外資産としての解約返戻金は純資産価額方式の評価額には反映することになり、評価を下げることにはなりません。法人が契約者となって保険料一時払の個人年金や終身保険に加入すると評価額を圧縮することができます。
例として「一時払保険料1億円、年金開始までの据置期間3年、年金受取期間36年、年金額330万円、年金受取総額1.2億円」という内容の個人年金に加入するケースをご説明します。契約形態は「契約者:法人、被保険者:社長、年金受取人:法人」とします。保険加入時は帳簿上の「現金」が「保険料積立金」に科目が変わるだけで、年金開始までの据置期間中もそのままです。ところが、年金開始後は、「保険料積立金」部分は相続税法24条の年金受給権で計算することになりますので、年金受取期間36年の場合、年金受取総額に乗ずる割合は20%ですから保険料積立金部分の評価は2,400万円となり、7,600万円の評価減効果があります。その評価減効果がそのまま純資産価格に反映します。
図2.純資産価額の評価圧縮効果

今後数年のうちに自社株を 後継者に移転しようと考えている場合
今後数年のうちに自社株を 後継者に移転しようと考えている場合、上記の対策を組み合わせることにより、移転を予定している時期に評価額を圧縮して購入資金や譲渡所得税、贈与税といった移転コストを抑える対策が可能です。自社株の評価方法は会社の規模により類似業種批准価額と純資産価額の折衷割合が異なります。評価対象企業ごとにどちらの対策の比重を高めるかを検討することがポイントになります。
税務の取り扱いについては記事掲載日現在施行中の税制によるものです。将来的に税制の変更等により記載されている内容が変更となる場合がありますのでご注意ください。
山本 周
保険サービスシステム株式会社
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
